誕生日には花束を抱えて【完】
「神崎とラブラブになれたのかよ~」


その夜、小泉はやって来るなり、肘でオレを突いた。


「まあね」

「なにこの~、詳しく聞かせろよ」


小泉がはしゃぐそばで、オレのケータイが鳴った。


「ん? 母ちゃんだ」


オレが言うと、小泉は騒ぐのを止めた。


「もしもし?」

『正平? アパートには着いたの?』

「ああ」

『あのね、正平に、知っておいてもらいたいことがあるの』

「なに?」


『愛ちゃんね……胃ガンで、もう長くないの』

「はあ? なに…言ってんの?」


『正平は知らないフリするの苦手でしょ。

だから、冬休みが終わって、愛ちゃんと会わなくなったら言おうと思ってたの』

「……嘘だ」


『愛ちゃんに、正平には自分で言うから、黙っててほしいって言われてたんだけど。

愛ちゃんは、言えないと思うから』

「いい加減なこと言ってんじゃねぇよ!」


オレは、頭に来て電話を切った。

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