誕生日には花束を抱えて【完】
「……どうした?」


オレの剣幕に驚いたのか、小泉がおそるおそる声をかけてきた。


「愛がガンでもう長くないとか、嘘、言うんだ。……酷いよな」


オレは、小泉に同意を求めたが。




長い沈黙の後、小泉は口を開いた。


「……嘘じゃ、ねぇよ」


ふたたび長い沈黙が流れて――。




今度は、オレが口を開く番だった。


「それ……どういう意味?」

「1カ月くらい前に師匠から聞いたんだ。正平には言うなって口止めされてて」


小泉は、自分が知っている、すべてを話してくれた。




愛にカレシができたというのは、嘘。


愛がもう長く生きられないということは、嘘じゃない。


せめて、反対だったらよかったのに――。




心から、そう思った。

< 189 / 200 >

この作品をシェア

pagetop