誕生日には花束を抱えて【完】
3日後。愛は、風花総合病院に入院した。


「オレ――僕、ずっと、愛さんのそばにいてもいいですか?」


オレは、中庭で、愛の父さんと会っていた(オレが頼んで来てもらった)。


「正平くんと一緒にいられて、……愛は幸せそうだ」


おじさんは、優しい目をオレに向けた。


「愛が入院したのは、『ホスピス』と言って、一般病棟とは違うんだよ」

「ホスピス……?」

「ホスピスは、……末期ガンで……余命宣告されたような患者――」


おじさんは、そこで言葉に詰まった。


「できる限り患者の意思を尊重して、最期を迎える――そういう、場所なんだ」


自分の勤める病院の――しかも、ホスピスに一人娘が入ることになるなんて、おじさんは思いもしなかっただろう。


「だから、付き添いも面会も制限なしだ。

簡易ベッドを使えば、病室に泊まることもできる。

……愛が望むなら、できるだけそばにいてやってほしい」


愛のそばにいることを認めてもらえて、オレはひとまずホッとしたのだが。

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