誕生日には花束を抱えて【完】
「小谷のことは……勘違いだったんだ」

「ふ~ん。でも、あの人とはつき合ってたんでしょ」

「それは……愛のこと、忘れたかったからで――でも、何もしてないから」

「……ほんと?」


意外な真実を知って、ちょっと嬉しくなったけれど。


「オレが好きなのは、愛だけだよ。今までも――これからも」


正平に言われて、私はなんて答えればいいのかわからなかった。




私とのことは想い出にして、他の誰かと、また恋をして――。


私以外の誰も、好きにならないで――。




どっちも真実で、どっちも嘘だから。


だけど……。




「正平……大好き」




この気持ちだけは、真実。




私は、正平にキスをした。


多分――最後のキスを。

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