誕生日には花束を抱えて【完】
「あら、全然食べてないじゃない」


お母さんが指摘したとおり、私はまったく食欲がなかった。 


「なんだ、まだ、お父さんが買ってきたもみじ堂のケーキもあるんだぞ~」


酔っ払って浮かれている、お父さん。


こんなお父さんを見るのは、初めて。


だから。


「食べてるよ。これ、美味しいね」


ロールキャベツとともに、


――風花中に行きたい


その思いを飲み込んだ。


やっぱり、お父さんたちの期待を裏切ることはできそうになかった。




「もしかして、正平くんと同じ中学に行きたいんじゃない?」


もみじ堂のケーキを口の中に押し込んでいると、不意に、お母さんが言った。


お父さんはお酒を飲み過ぎて、リビングのソファで眠っていた。

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