誕生日には花束を抱えて【完】
「え?!」

「正平くんが引っ越してきてから、愛、すごく楽しそうだったから」

「……そう、かな?」

「桜葉学院じゃなくてもいいのよ。愛が一番行きたいところに、行けばいいの」


お母さんは優しく微笑んでくれた。


「でも……お父さんが」

「……そうねえ、愛に好きな人ができたなんて知ったら、ショック受けちゃうから、お父さんにはナイショね」

「そうじゃなくて!!」

「ああ、学校のことなら大丈夫」


お母さんは軽くウィンクをした。




翌朝、お母さんはお父さんに囁いた。


「だけど、電車通学だと心配ね。特に、痴漢とか」

「ち、痴漢――?!」


一人娘を溺愛するあまり、お父さんはしばらく考え込んだ後、


「風花中に行きなさい!!」


高らかに宣言したのだった。

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