誕生日には花束を抱えて【完】
数日後。


夜2人きりで勉強している時、また、ひどいことを言ってしまった。


すると、いつもは悔しそうに黙り込むだけの正平がボソッとつぶやいた。


「おまえの演技力、すげぇな」

「え?」

「学校だとあんなにカワ……優しいのに。2人の時もあの演技続けてよ」


……正平の、バカ。


あれは演技なんかじゃないのに――。


「2人きりの時にまで、正平に優しくする必要ないでしょ」


素直になれない、私。


「私があれだけ完璧にやってるんだから、正平も、ちゃんと『優しいカレシ』の演技してよね」


生意気な口調は止められなくて。


「ただし! あくまでも『フリ』なんだからね。そのこと、忘れないでよ」


私はトドメをさすことになってしまった。


……自分自身、に。

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