誕生日には花束を抱えて【完】
「前から思ってたんだけど、正平って神崎に冷た過ぎねぇ?」


小泉はすっかり、愛の演技にだまされていた。


愛は、オレにも『優しいカレシ』を演じろと言った。


だが、オレは愛みたいに器用じゃない。


しかも、愛が可愛くすればするほど、

「ただし! あくまでも『フリ』なんだからね。そのこと、忘れないでよ」

このセリフが蘇り、オレは素っ気無い態度しか取れなくなってしまうのだ。


「あれだけ優しくて可愛い子、なかなかいねぇぞ。もっと優しくしてやれば?」


小泉に非難めいた目を向けられて、


「実は、あれは全部、演技なんだ」


オレは、頼まれてカレシのフリをしているだけだということと、2人の時の愛の態度は全然違うことを暴露した。


「またまた~」


しかし、小泉は信じてくれず、


「マジなんだって。本当は、オレ、すげぇ嫌なんだよ」


オレはおおげさに顔を歪めて見せた。

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