誕生日には花束を抱えて【完】
<正平>


放課後、愛が教室までオレを迎えに来た。


「正平、帰ろ」


可愛らしく、愛がオレを呼ぶ。


それを見て、小谷は一瞬、悲しそうな表情をした。


「教室に来んなよ」


昇降口に向かう途中、オレは不満いっぱいに言った。


「なんで? 私が行くとマズイことでもあるの?」


愛ににらまれて、ふと、過ぎった不安。


小谷のことを知られたら、邪魔をされるかもしれない――。


「いや、恥ずかしいから、だよ」


オレは即座に答えた。


そして、次の日からは、愛が来る前に愛のクラスまで迎えに行った。


そうすれば、小谷に、愛と一緒にいるところを見られずに済む――嫌な思いをさせずに済む、と思ったからだ。

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