誕生日には花束を抱えて【完】
オレの、15歳の誕生日。


「ケーキ食べる~?」


「誕生日おめでとう」ではなく、このセリフとケーキと問題集を片手に、愛はオレの部屋にやって来た。


小6の時から、ずっと、そうだった。


この辺りでは一番美味しいと愛が絶賛している、もみじ堂のケーキ――。


オレは、甘いものが苦手だった。


だから、昨年も一昨年も、2人分のケーキは愛が平らげた。


当然、今年もそうなる。


「ここのケーキ、ほんと、めっちゃ美味しいんだよ~」


愛が嬉々として自分の前に2つのケーキを並べた時、


「正平~、お客さんよ~」


母ちゃんの声が響いた。


「今頃誰だ?」


オレは愛を部屋に残し、外に出た。

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