誕生日には花束を抱えて【完】
立っていたのは、小谷。


誕生日の夕方、わざわざ家に来るなんて目的はだいたい予想がつく。


オレは一瞬にして緊張に包まれた。


「あ、ど、どうしたの?」

「深見くん、誕生日おめでとう。これ、受け取って」


やっぱり、愛とは違う。


小谷は、心のこもった言葉と、華やかな包みをくれた。


「あ、ありがとう」

「あのね」

「ん?」

「私、深見くんが好き。

深見くんには神崎さんがいるって、わかってるけど、高校、別々になっちゃうから、どうしても伝えておきたかったの。

……じゃあ、私、帰るね」


小谷が背を向けた瞬間、


「あ、もう遅いし、送ってくよ」


オレは反射的に歩き出していた。

< 47 / 200 >

この作品をシェア

pagetop