誕生日には花束を抱えて【完】
<正平>


小谷を家まで送って帰って来ると、愛はまだオレの部屋にいた。


「どうして送って行ったの?」

「だって、暗くて危ないし」

「カノジョがいるんだから、期待させるようなことしない方がいいんじゃない?」


上から目線な、愛の態度。


なんだかムカついて愛を睨んだ。


「オレ、カレシのフリ、やめるから」

「え?」

「おまえのワガママにつき合うの、もう、うんざりなんだよ」


愛には散々酷いことを言われてきたんだ。


これぐらい言ったってバチは当たらないだろう。


自分を正当化し、そのまま睨みつけていると、愛の方が先に視線を逸らした。


「……小谷さんのこと、好きなの?」


ふと見せた儚げな表情に、一瞬胸が痛んだが。


これも、演技だ――騙されるな。


「あぁ、好きだよ」


オレが即答すると、愛は表情を強張らせて黙り込んでしまった。

< 49 / 200 >

この作品をシェア

pagetop