誕生日には花束を抱えて【完】
「あ、そうだ。山本から聞いたんだけど、神崎、百合女受けるんだって」


百合女――百合丘女子学院は、私立の難関女子高校。


……なんで?


東高じゃないのかよ。


自分と一緒に東高に行けって、オレに命令したくせに――。


……いや。


悪いのは、オレだ。


おまえのワガママにつき合うの、もう、うんざりなんだよ――。


オレがあんなことを言ったからだ。


「やっぱ、神崎ってめちゃくちゃ頭いいんだな。山本は一緒の高校じゃなくなって残念がってたけど」

「……なあ」

「あん?」


――オレ、愛のこと、好きなのかも。


本心を打ち明けてしまいたかった。


だけど、あまりにも今さら過ぎて。


「いや、なんでもない」


オレは問題集に取りかかるフリをして、愛の話題を終わらせた。

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