誕生日には花束を抱えて【完】
<愛>


日曜日。

塾の模試を受けに行く途中、近くの公園の前を通りかかると、正平がバスケットの練習をしていた。


もうすぐ6年生になるという春休みに、初めて正平と口をきいた時のように。


……ねえ。


もしも私が、正平の前でも優しい女の子だったら。


そしたら、私を好きになってくれた?


ほんとうのカノジョにしてくれた?


……だけど、もう、正平には好きな人がいるんだよね。




私が公園の前を通り過ぎようとすると、


「おいっ」


正平が私に向かって走って来た。


「なんで、オレがフラレたことになってんだよ。しかも変な宣言しやがって」


不機嫌そうな口調のわりに、正平の表情は優しかった。


正平が小谷さんを好きだと知って、私は一晩中考えて決心した。


もう、正平のジャマをするのはやめよう。


今まで両想いの2人のジャマをしちゃったから、せめて小谷さんとつき合いやすいようにしてあげよう――って。

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