誕生日には花束を抱えて【完】
オレは思い切って花屋に飛び込んだ。


「す、すいませんっ」


母の日にカーネーションを買ったことはあるが、好きな女の子のために花を買うのは初めて。


だから、めっちゃ、緊張した。


「ハイ、いらっしゃい」


人の良さそうなおじさんの笑顔に、少しホッとした。


「これ、5本、ください」

「プレゼントかい?」

「あ、いえ、あの、お見舞いですっ。ほんと、ただのお見舞いなんです――」


花を初めて買った少年は花を持ち歩くのも恥ずかしいだろうと、おじさんは花束を紙袋に入れてくれた。


そのおかげで、帰り道、オレは恥ずかしい思いをせずに済んだ。

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