誕生日には花束を抱えて【完】
「あ――」


近所のおばさんを見つけた瞬間、オレは愛の手を放した。


そのおばさんは、井戸端会議の主。


手をつないでいるところなんか、見られてしまったら、


「神崎さんちの愛ちゃんと、深見さんちの正平くん、ラブラブなのよ~」


なんて、オーバーに脚色されて、近所中に言いふらされてしまうだろう。


そんなことが親の耳に入ったら、めっちゃハズい。


「あら~、相変わらず、仲がいいのねえ」


おばさんは、明日の話題を見つけた! と言わんばかりに目を輝かせ、オレたちのそばへやって来た。


「同じ部活だから、帰る時間も一緒なの」


愛も、オレと同じことを思ったらしい。


「それより、竹谷さんちの美香子ちゃん、テレビに出たの知ってる?」

「まあ、なんの番組?」

「あのねえ――」


違う話題を提供し始めた。

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