誕生日には花束を抱えて【完】
愛とオレは、今でも毎晩のように2人で勉強していた。


2人きりの、部屋――。


手を伸ばせば届く距離に、愛はいた。


そして、2人の気持ちは、多分、同じ。


オレが「好き」だと言えば、愛はすんなり受け入れてくれるだろう。


いや、むしろ言わせようとしている――?


最近、愛は可愛い仕草や表情で、オレの理性を崩さんばかりの攻撃を仕掛けてくるのだ。


「……だから、オレ、自信がないんだ」

「ぁん?」


今は『フリ』だからと、自分に言い聞かせてなんとか抑えているけど。


ほんとうのカノジョになったら、オレは愛になにをするかわからない。


キスして、抱きしめて、それから――。


愛が嫌がることをしてしまいそうで、怖かった。


なにしろ、オレにはそういうチャンスがあり過ぎるし。



オレは愛のことを大切にしたかった。


だからできることなら、もうしばらくは今のままの2人でいたかった。

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