誕生日には花束を抱えて【完】
「あ、小泉に傘貸しちゃったから、愛の傘に入れて」


私に気づくなり、正平が言った。


「……私も、奈緒ちゃんに貸しちゃったんだけど」

「……マジ?」


顔を見合わせた後、どちらからともなく雨空を見上げた。


「……けっこう降ってるね」

「しょうがねえなあ」


正平は学ランを脱いで、私の頭に被せた。


「これで走ってけばなんとかなるだろ」

「でも、……正平は?」

「オレなら大丈夫だよ」


正平は、優しくて頼もしい笑顔を返してくれた。

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