誕生日には花束を抱えて【完】
<正平>


ふと、我に帰ったオレは。


「うわっ」


愛を抱きしめていた手をほどいた。


「ご、ごめん。つい――」


オレは焦った。


「ね、熱が――」


そうだ――熱だ。


焦りながらも、すべてを熱のせいにしてしまうことを思いついた。


「ごめん、熱でボーっとしちゃって」


オレはフラついてみせたが、下手な嘘を見抜いたのだろう。


「――正平の、バカ! 最低!」


愛は、大声で叫んで出て行った。

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