地味子の秘密 其の参 VSワガママ姫サマ
包帯を巻き終わると、汚れたタオルや脱脂綿などを片付け始めた。


「ちょっと…じっとしてて。先生達に報告して来るから」

「悪いな…」


わずかに微笑んで、部屋を出て行く。




10分程して…戻って来た。


「先生達心配してたよ?ファンクラブはもっと凄かったけど」

「そっか…。ありがとな」

「っっ……どう……いた…し…ましてっ」


微笑んで返すと、下を向き俯く。

限界だな。


「杏?おいで?」

片手の指先を握り、引き寄せた。



ギリギリまで張っていた糸が切れたのか―…瞬く間に抱き着いてくる。

首に手を回し、片口に顔を埋めてピクリとも動かない。


背中に手を回して…細くて柔らかい体を抱きしめた。

見立て通り……杏の体は震えている。
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