地味子の秘密 其の参 VSワガママ姫サマ
「〜〜〜〜ッ」
やられた。
エスカレーターの方を見ると…
ニコッと笑いながら小さく俺に向かって手を振っている杏。
「……………。」
さらに顔が熱くなった。
口パクで『大好き』。
手を振り返すと、さらに嬉しそうに微笑んだ。
搭乗口の向こうに消えていく杏をいつまでも見ていた。
順調に行けば、明日には帰って来る。
ちょうど学園は休みだし、仕事を早めに片付けて……迎えに来るとするか。
「早く帰って来いよ……杏」
小さく呟いて―…笑みを零す。
しかし。
この空港での杏の笑顔が
俺が最後に見た笑顔だった――。