地味子の秘密 其の参 VSワガママ姫サマ
酷く慌てた様子―――…。
というか、泣いていた。
「松沢さん?どうかしたの?」
得意の王子様スマイルで、微笑みながら問い掛けた。
「あの…ね…ッ……」
「うん?」
悠がただ事ではないと感じたのか―松沢を支えるように隣に立つ。
ブー……ブー……
「あ…ちょっとごめんね?」
タイミング良く携帯に着信が入り、松沢に一言断って、通話ボタンを押して耳へあてる。
電話の相手は、俺の親父。
『陸かっ!?』
俺以外に誰が出るんだよ。
『あのな……落ち着いて聞け…』
電話の内容は会社経営のことだと思っていた。
そして悪夢が現実となる。
『杏ちゃんが…………死んだ』
「杏樹が……ッ………死んだの」