地味子の秘密 其の参 VSワガママ姫サマ
12月に近いはずなのに、この日は暖かかった。


朝食を平らげた直後、親父達から正装するように言われた。


珍しく海外から帰って来たと思えば……正装して何すんだよ…?



スーツに着替え、親父とババア、俺の3人でベンツに乗り込んだ。


静かに高級住宅街を走る。





「着いたぞ、陸」



親父に呼ばれて意識を引き戻した。




「えっ…………」


ベンツから降り……目の前にそびえ立つ豪邸を見上げる。



ちょっと待て……ここは……。




ドクン………



心臓が一際大きな鼓動を打った。




まさか……そんなわけない。


親父達が引き受けるわけない。



だって…まだ一ヶ月経ってねぇし……第一、あの女をうちの家族が認めるわけない。






逸る心臓をなだめ…豪邸の表札を見た。





――――――――《楠家》
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