地味子の秘密 其の参 VSワガママ姫サマ
コンコン……

「お嬢様、お茶をお持ちしました」


部屋の外から、メイドが声をかける。



「入っていいわよ」


ガチャ……


「失礼いたします」



メイドの吉川が、トレーにティーカップを乗せて運んできた。



「お嬢様にはミルクティーで、滝本様にはブラックコーヒーです」

「……もう良いわよ。出て行きなさい」

「はい、お嬢様」



ペコッと頭を下げると、チラリと陸さんを一瞬だけ見る。



「……ご婚約おめでとうございます、滝本様」

「………コーヒーサンキュ」

「仕事ですから」

「………」



二人とも冷静な抑揚のない声で、ボソボソと言葉を交わし、吉川はもう一度わたくしに一礼して、部屋を出て行った。



吉川が出て行った後、僅かに笑みを浮かべる陸さん。
< 564 / 655 >

この作品をシェア

pagetop