地味子の秘密 其の参 VSワガママ姫サマ
「……“顔”解除」
カチャ……と縁ありの分厚い眼鏡を下を向いたまま外す。
「…………“霊力”解除」
小さく呟くように言うと、まわりの空気がドクン…と大きく鼓動を打った。
風が吹いたわけでもないのに…
サラサラの黒髪がフワリと揺れる。
そして最後に告げた。
「“神崎杏樹”………解」
ゆっくりと顔を上げていく。
口元にはほのかな笑みが浮かんでいた。
そこにいたのは―――…
「お待たせいたしました。何しろ“あの世”は遠いですからね」
ニッコリと笑う………
杏がいた―――――。