地味子の秘密 其の参 VSワガママ姫サマ
クローゼットにかけられた服を指差す。



「今日は泊まれって。親父達からのクリスマスプレゼントだってさ」

「本当に制服一式……鞄まで持ってきてあるし」




おばさんの準備の良さに杏は苦笑い。





しばらく沈黙が続き…


俺から切り出した。




「……なんであんな大掛かりな芝居したんだよ?」


「え…………」


「なんで俺に言わなかった?」


「………」



サラサラの黒髪を撫でながら問い掛ける。



「どうして?」


「………ごめんなさい…」


「………男達には襲われてないんだな?」



コクリと頷いた。




「放火された倉庫で怪我しなかったのか?」

「うん。してないよ」



俺のシャツを握りしめたまま返してくる。
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