地味子の秘密 其の参 VSワガママ姫サマ
――杏樹Side――



「……嘘でも、もうあんな思いはしたくねぇ……」

「……もうしないよ。色々ごめんなさい」



シャツを握ると、優しく抱き寄せられた。


ほのかに甘い香りが鼻をくすぐる。




「…あの晩さ、俺の部屋に来たのはなんで?」

「………どうしても逢いたくなったから。魂だけを飛ばした」


「なんでキスマーク付けた?」

「…厄よけ。その頃に、お嬢様が色々ヤバイことに手を出してるって知ったから。それに……」


「それに?」

「陸はあたしだけのものって印」



それだけを答えると、胸に顔をうずめた。



頭上では、陸のクスクスと笑う声が聞こえる。



「……何が可笑しいの」
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