家政婦は、みた
0*プロローグ
―少女の名前は茶川 縁という。
ちゃがわ ゆかり
少し変わった漢字をした名前だったが、縁はその名前を気に入っていた。
そんな縁はいつも孤独を感じていた。人を信用することが馬鹿らしく、いつも一人で行動をしていたのだった。
縁は、白い肌に黒く長い髪と澄んだ瞳をしていた。唇や鼻は小さく、異性から好かれやすい外見だったが、“恋人”という類の親密な関係をつくったことはない。
そんな縁は学生時代から同性から嫌われていた。
呼び出しをされた事は何十回もある。その中で殴られたことも多々ある。
人間関係ほど難しいものはない。数学よりも難しい。
縁は年をとるにつれ、考え方がひねくれていった。それは、自分以外の人間を拒絶させてしまった。
家族はそんな縁に疲れ、今では弟の葵に期待をそそいでいる。
学校にも家にも自分の居場所はなく、自分から拒絶したとはいえ、縁は寂しさを募らせ、しまいには高校を中退し、故郷と遠く離れた場所に一人暮らしを始めた。