泣き虫少女と強がり少年
とりあえず、私は右手を振り上げてみた。

そして、西野の頬を……叩かなかった。


それみたことか、と西野が鼻で笑う。
そんな西野に、私は余計に腹を立てる事になったが、
やはり手は出せそうになかった。

私は、臆病者なのだ。

……それでいて、泣き虫でもある。


「ムカつくんなら叩いてみればーっ!
 ブースブース!」

調子に乗った西野が、歌い出す。
西野作曲・作詞の、センスのない歌。
どうやら、私に向けた物らしい。

「ブスでぇ、デブでぇ、臆病なぁ…」

西野は、そこまで歌って…途中で、止めた。

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