記憶の欠片たち
それは、
ある日の部活の帰りの事。
普段通り、茜と二人帰路につこうと大声で笑い合いながら校門へと歩いていた。
昇降口から校門までの直線。
その右手には、いつものグランドがあって。
それを仕切るように、合間には園芸部が育てる花壇がある。
…花の匂い。
ふわっと控えめに風と共に香るその匂いに、無意識にふと花壇を見てしまう。
それは茜にはお見通しの事で、
「…まーた見てる。」
そう言われてハッとする。
「そんなに気になるならさぁ、華道部はさておき園芸部入れば良かったじゃん?」
「…なんで、そーなんの。あたし、花は嫌いだって言ってんじゃん?嫌な匂いがするからぁ~、つい見ちゃうだけだって!」
「…まーた。花壇見る時、紗季『嫌い』って顔してないんだって!」
「してるって!園芸部とかキャラじゃないし!」
呆れた様に見つめてくる茜に、私はムキになって大声を出して否定する。
そんな最中、
「あれー!?ヤベぇ、どこ行った!?」
そんな声と共に、一人の男子が花壇へと近付いた。
「…あ、小林…」
ぼそっと呟く茜の声で、それが先日の『小林』だと認識。