記憶の欠片たち


そして。


「ねぇ。アッキーって、どれ?」

あたしが仁王立ちで不機嫌そうに首を傾げると、目の前の「小林」はきょとんと目を見開いていた。

テスト1日目が終わった教室のドアの前で、あたしは偉そうに待ち伏せ。


「…アッキーなら、ついさっき井上と帰ったよ?何か用だった?」

「…井上って?彼女?」

「――いやいや!アッキーの幼馴染み?忠犬アッキーの主人だよね!うちのクラスの名物で有名でさぁ。あ、追いかければ未だ間に合うんじゃない?」

なんか…軽そうな男。
向こうにとっては初対面なのに、聞いてない事までベラベラとよく喋る。

これの友達でしょ?
なんか嫌な想像がついて、あたしの敵意はメキメキと育っていた。


「…ふぅん?あたし3組の紗季。小林くん、案内してよ!アッキーの所まで。どぉしても、今日会いたいんだよね?」

しかも昨日の悪い印象もあって、小林に対するあたしの態度は最悪。
花を踏む奴は、嫌な奴。


「…いーけど。…なんか最近アッキー…モテ期…?」

…でしょうね。
そう言いたいところだけど、あたしがテニス部繋がりがある事は未だ言わない。

嫌な奴だったら、
公表してシメてやる。


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