記憶の欠片たち


日記を読まれたのが余程恥ずかしかったのか、彼はちょっと涙目で。
それが可愛くて笑みが溢れる。


「超懐かしの品じゃん。……どっから出てきたの、コレ。」

『信じらんない』とブツクサ言いながら、それでもゴミ箱には捨てずに本棚にしまうアッキーが好き。


「…君なら将来、立派な犬になれるよ?うんうん…」

「…忘れろ。今すぐ忘れろッ!」

すぐムキになる強がりなアッキーが好き。


「あはは!言ったことなかったっけ。あたしの理想の人は『犬』なんだよ?」

「はぁ!?未だ言うか!忘れろ!…あれか、紗季。お前コレ読んで、さては妬いてんなッ?」

ニヤッと意地悪を思い付いた子供の様に笑うアッキーも好き。


「え~?本当なのにー。今さら妬いてどうすんの。全部知ってるし~。」

「……そうですね。」

「まっさかアッキーが日記とは、恐れいったケドね!」

「…紗季がイジメル…」


あたしのピアスの穴は、
自然と埋まった。


少し開いた窓の隙間からは、ふわっと隣の庭先の花の匂い。

もう嫌いとか言わない。

華道は嫌いなままだけど、
地面に咲く花は、好き。



『…一緒に居てくれる人が、
あたしにも出来たから…。』



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