記憶の欠片たち
「あはは!紗季らしいよ!頑張れ~?球拾い。」
茜がバンバン背中を叩くから、歩く体が前後に不自然に揺られて、またも鞄が落ちかける。
「…痛いって…。茜は毎日元気だなぁ…」
「はい?紗季には負けるでしょ。何、今日は大人しいじゃん?何かあった?」
「べっつにー?」
再び鞄を肩にかけ直しながら、小さくジャンプ。
短く詰めた制服のスカートの裾をちょっとだけ気にしながら。
その様子を見ていた茜の目が、あたしの耳元で止まった。
「――んあ!?」
「あ?」
「紗季!またピアス増えた!?」
「あ、うん?」
大きな瞳の茜が、耳たぶに食い付くような勢いでまじまじと顔を近付けた。
「あんた何個あける気よ…。お母さん泣くよ!?」
「5コ目~!大丈夫、あたしに興味ないから。親たち、全く気付いてないし~!」
ふふん、いいでしょ。
そんな動作をしながら、わざとらしく髪を耳に掛けた。
それは、満面の笑顔で。
「マジで?あたしん時、1コあけただけで大喧嘩だよ?いいなぁ、自由じゃん!」
「あはは!ウチ、放任だからさぁ!」
大口を開けて笑う朝の通学路。
毎日会う友達は、
私を、見つけてくれる。