記憶の欠片たち
茜がオシャレに目覚めて、両耳に1つずつ穴をあけた。
それを羨む振りをして、次の日あたしも同じに2つあけた。
ピアスなんて、
どうでも良かった。
本当は、ただ親と喧嘩する理由が欲しかった。
気付いて…
気付いて、お母さん。
気付いてよ…
あたしの耳の穴は、
どんどん増えていくのに。
母親が自分に注目する術は知っていた。
あたしが花や華道の話をすると喜んで顔を向けてくれる。
見て欲しかったら、
笑顔が欲しかったら、
華道をやればいいんだと分かってた。
でも、やらなかった。
これからも同じ。
花は、嫌い。
大嫌い。
心が…
痛い夢を見るから。