記憶の欠片たち


茜がオシャレに目覚めて、両耳に1つずつ穴をあけた。
それを羨む振りをして、次の日あたしも同じに2つあけた。

ピアスなんて、
どうでも良かった。

本当は、ただ親と喧嘩する理由が欲しかった。


気付いて…
気付いて、お母さん。

気付いてよ…

あたしの耳の穴は、
どんどん増えていくのに。


母親が自分に注目する術は知っていた。
あたしが花や華道の話をすると喜んで顔を向けてくれる。

見て欲しかったら、
笑顔が欲しかったら、
華道をやればいいんだと分かってた。


でも、やらなかった。
これからも同じ。


花は、嫌い。
大嫌い。


心が…
痛い夢を見るから。


< 6 / 19 >

この作品をシェア

pagetop