記憶の欠片たち
テニス部に入って数日。
意外と球拾いが楽しかった。
入学したばかりの、まだ緊張が残る1年の集団に交ざって、何気にいい先輩になれてた。
まさか自分が年下受けするとは思わなかったし。
テニスコートから少し離れた、他の部活が入り交じるグランドの隅で。
部活後に後輩たちが固まってたから、興味本意で輪に入った。
それが、始まり。
「何してんのぉ?」
「わぁ!紗季先輩!?」
急に後ろから声を掛けられて、声を潜めてた後輩たちがビクリと肩を上げた。
「誰見てたのかなー?」
あたしは恋愛に興味はなくて。
普段通りテンション高く、調子の良い事言ってからかってやろう、冷やかしてやろう…。
そんな事を考えてた。
「…アッキー先輩を…この子が好きで…。」
「紗季先輩、アッキー先輩の事、何でもいいので教えてくれません?」
アッキー先輩…?
誰ソレ。
あたしは首を傾げながら、後輩たちの視線の先を追う。
そこには、多分同学年の野球部と陸上部の連中が騒いでいて。
そのガヤガヤとしたガキ臭い連中が、チラチラとたまにこちらを伺いながらニヤニヤと笑い合っていた。
「…どれ、アッキーって?」