HEMLOCK‐ヘムロック‐
「かーいー!!」
放課後。
黒い、使い古されたランドセルを背負った少年は、下校中に校庭で友人らに呼び止められて歩みを止めた。
「界もさー、サッカーやってかねー?」
少年は躊躇した。今日は母親がパートの日なので、家をあまり空けておけない。
鍵っ子の少年は、母親がパートの日は真っ直ぐ家に帰る様に言いつけられていた。
「ごめーん! 今日は……」
「あれ? あれ界の妹じゃね!?」
サッカーをしていた少年達は集まって、校門に向かって歩いてる少女に注目した。
赤いランドセルの少女は振り返り、少年達の方を見た。
少女はその中に兄の姿を確認した。
「あ、お兄ちゃーん」
このタイミングで妹を見つけた事は、少年にとって好都合であった。頭の中で、素早く時間の計算をする。
妹が家に居れば2時間は充分に遊べる。
少年は悪戯っぽく笑った。
「あのさー、今日俺ちょっとサッカーやってってもいいかなー? お前鍵持ってるよなー??」
「うんー持ってるよぉー! 先に帰ってるねぇ」
「早く帰ってきてねぇー」と、妹は友達と校門を抜けて行った。
「界の妹、可愛いよな~」
「おーい! 界もサッカー入ったぞ~」
こうして少年はサッカーの群れに入っていった。