HEMLOCK‐ヘムロック‐
 勇は盟の視線に不思議そうな顔をしたが、どう解釈したのか、


「日系アメリカ人なんです。私」


と笑顔で言った。

 確かに目鼻立ちが日本人離れしている。盟も、「あぁ。道理で」と納得した様な表情をとって頷いた。



「ところで、今日はどういったご用で? 兄からの言付けでしょうか?」



 そんな筈はない。と盟は確信していた。

今まで、詠乃が秘書の時だって、礼二が何の連絡も無しに遣いをよこした事なんてなかったからだ。


「盟さんのお兄さんの、界さんに話があったのですが……、今お留守なんですか?」

「いえ、兄は自室です。今呼んで来ますね」


 そう言って盟が立ち上がった瞬間、勇に手を取られた。
あまりにも瞬間的な出来事に盟は固まってしまう。


「待って! あなたにもお話しがあるんです。盟さんに、です」

「……どんなお話しでしょう?」


 盟は座り直したが、いよいよ訝しい表情は隠せない。


 その時だった。

刹那に、ある文字が盟の頭の中を駆け巡った。




“勇”





 そうだ。この男、詠乃のVIPボードにあった名前。
『Raiz』の会員リストを買った男。


(この男は一体!?)

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