HEMLOCK‐ヘムロック‐
「と、言うわけだ。今回の依頼は」
「相手の男の特徴は黒髪で、長身。歳は20後半から30代くらいだそうよ」
直接依頼を受けた界と盟が、透と泉に説明する。
4人は依頼人用ソファーに腰掛け、盟が制作した資料と、正也が不倫現場を目撃したと言う場所を界が撮影して来た写真をそれぞれ見ている。
それらをテーブルに広げ、今回の捜査に向けての黒菱ファミリー作戦会議が始まった。
「この資料には橘サンの奥さん、44歳ってあるけど……。やっぱ若いオトコがいいのかな~。
もしかして相手ホストとかかな!?」
「さぁ。でも橘さんはその2人がホテルに入る所を見たわけだから、ホストだったら枕営業って事になるわね」
盟が言った枕営業とは、ホストの営業スタイルの一つである。
ホストが客と一夜を共にするという禁じ手でもあるサービス内容から、枕と言う名がついているのだ。
「客と寝るホストなんて珍しくねぇだろ。な? 透?」
界は右隣に座る透を脇で小突いた。透は相当嫌なのか、険しい顔つきで界を睨み返す。
「俺に振るなよ。わざとらしい」
「そっか、透君ってここ来る前はホストやってたんだっけ?」