HEMLOCK‐ヘムロック‐



 それから4日間、界と透は昼夜と咲恵を張ったが、咲恵がそれらしい男と会っている様子は特になかった。


「本当にオトコなんているのか? それか相当慎重に会ってるのか」


 透がペンを弄りながら呟いた。

 今2人は咲恵のパート先のクリーニング店の向かいの喫茶店にいる。窓際席から見える咲恵のパート先を監視する為だ。

 端から見れば昼休み中の会社員2人組だろうが、すでに4時間はそこで張り込んでいるので、店員には多少怪しまれているかも知れない。

界が6杯目のコーヒーを頼んだ時は、心無しかウェイトレスの目が据わっていた気がする。

 カップを置いて界が話し出した。


「橘さんの話だと普段は真面目な奥さんらしいから、その場限りの関係、なんて事はないと思う。
不倫は簡単に始めたり終わらせたりできる奴のパターンと真剣に相手を好きになって抜け出せないというドロドロパターンだからな。」

「金銭問題が絡んでる場合もあるぞ?」
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