HEMLOCK‐ヘムロック‐
そんなに広くはない黒菱興信所に8人も人間がいるのは初めての事だった。
再会の後にも問題は残っていた。
「それじゃあ、盟は俺と来てくれるんだよね?」
イオがおもむろに立ち上がった。それはここから立ち去る意である。
盟も立ち上がろうと、椅子から上体を前に倒した時だった。
「だったらさ、」
いきなり言葉を放った界に透、泉、礼二、詠乃は注目した。 盟とイオも界を見つめる。
まりはそんな全体の様子を静かに見ていた。
「お前、今日からここで働け」
「……はぁ?」
界の提案に、イオは間抜けな声を上げた。
「お前、組織抜けて来て、どうせ追われの身だろーが。
そんな奴に俺の妹は任せらんねーよ。
ここで働けば、イヤでもコイツと一緒に居られるぞ?」
界が盟を指差した。
界は盟が連れて行かれるのを阻止すると同時に、紅龍會への貴重な手掛かりとなるイオを引き込もうとしているのだ。
自分が城戸の時に取った行動より、数枚上の界の作戦に礼二は内心色んな意味で感心していた。
「妹を取り戻せたのに、俺を使ってまだ紅龍會に楯突くの?」
「盟の母親はまだソコにいるんだろ?」