HEMLOCK‐ヘムロック‐
20分程経ち、目的のバス停で咲恵と男はバスを降りた。
2人は完全にバラバラに歩いていたが、向かう方向こそ同じであった。
そしてあるビルへ入っていく。エレベーターに乗り込む所までは界と透からも伺えた。
「4階で止まった。ここは……」
そのビルの4階はどの駅にもあるような有名な進学塾であった。
「透、入る所は?」
「大丈夫だ、撮ってある」
透はデジカメを見せた。尾行捜査において、対象者の行動の証拠写真とその日時のメモを取る事は基礎中の基礎である。
デジカメや携帯電話のカメラ機能は、同時に日時もデータとして残せるので、黒菱興信所の重要なツールである。
ちなみに界はこれに加えボイスレコーダーなども常に携帯している。
「どういう事なんだ? ホテルならともかく、進学塾」
「帰ったらこの塾との関係を調べよう」
しばらく外で様子を伺っていると20分程して咲恵だけが出てきた。
「現在16時22分。よし」
その後二手に別れて咲恵と男をそれぞれつけたが、分かった事は男がその塾で勤めいるらしいということだけで、咲恵には不審な動きは全く無かった。