HEMLOCK‐ヘムロック‐



 次の日。界は咲恵を、透は塾講師の男をそれぞれ尾行する。


「確か今日はパートの日じゃなかったな」

 閑静な住宅街。似たような家屋が軒を連ねる中、橘邸も溶け込む様にそこに存在した。
探偵に張られている。と言う事以外は何の変哲もない一軒家だろう。

 界は咲恵の家が見える位置にグレーの乗用車を停めて、張り込み刑事の様に車内から様子を伺っていた。
咲恵は今日は家から出ておらず、出掛ける動きもない……。


♪ジャーン ジャジャジャーン、 チャラララ、 チャ チャ チャ チャ チャ チャ チャ――

 突然車内に某SF映画のテーマが響き渡った。壮大なファンファーレに驚き、界は微糖缶コーヒーを吹いてしまった。


(ヤバい! バイブにしてなかった!)


 慌てて助手席の携帯を取ると、透からのメールだった。



『塾講師の男は大石 惣介 33歳
橘さんの息子さんも教えてる
今そいつが接触した男が橘さんの見た男に当てはまる
写メ送っとく』



 添付された写真には、昨日の茶髪の男と黒髪の背の高い男が写されている。


「この男が……、奥さんのオトコなのか?」



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