HEMLOCK‐ヘムロック‐
 呼び方も、声も全然違うのに、嫌でもまりの事を思い出させた。
そもそも、妹が消えてしまった所に、新たに妹となったこの少女の存在が界にとっては歪であったのだ。


「どうした?」


 盟と義兄妹となって1年経っても、界は礼二の様に彼女に優しく接する事が出来なかった。

しかもその日は何故だったか、酷く疲れていた。


「あのね、学校で家族の絵を描いて、賞もらったの! これがね、界お兄ちゃんだよ!」


 その絵は……、

 界にとって、彼の中の“歪”そのものを表現している様に思えた。


 偽りの家族が笑顔を称えている。中央に嬉しそうな少女。

幸せな家族。幸せな妹。

しかし彼の本当の家族は?
中央に居るべきは……?


何もかもが違う。
不満な訳では無い。
しかし歪だった。

なにもかもがイビツに感じた。



 そしてポロッと零してしまった。







「俺はお前の兄ちゃんじゃ無いけどな」




抑揚の無い声で。


 自分が最低な事を言っているのは理解出来たが、不思議と罪悪感は全く無かった。
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