HEMLOCK‐ヘムロック‐
一方、メールを送った透はその2人をつけている所だった。
塾講師の大石と黒髪の男はだんだんと人通りの少ない路地に進んでゆく。いよいよ尾行もし辛くなってきた。
ふと2人は路地裏に入ってしまった。共に入る訳にもいかず、透はその路地の角からギリギリ様子を覗くしかなかった。
誰もいない路地裏で、大石は黒髪の男に何か小包を渡していた。男は何でもない風にそれを鞄にしまい込み、そして何か会話をした後2人は別れてしまった。
大石は反対の表通りへ、黒髪の男は透の方へ向かってきた。
(あの小包気、になるな)
透は黒髪の男の方の跡をつける事にした。男と至近距離ですれ違うも、慌てる事なく、再び尾行に最適な距離を取る。
黒髪の男がタクシーに乗りこんだので、透も別のタクシーを捕まえて追った。
(少し無理しすぎか? でもさっきの小包……、嫌な予感がする)
タクシーを降り、男はある雑居ビルに入って行った。ビルと言っても4階程の大きさで外装は所々剥がれており、見るからに古い建物。
しかし透には心当たりがあった。
(ここは!! 確か呈朝会(ていちょうかい)――暴力団の事務所だ! あの男、暴力団員なのか)