HEMLOCK‐ヘムロック‐

「界くんが紅龍会について知ったのは、灰仁さんが亡くなった後だった訳ね?」


 横で礼二が読む遺言書を覗き見た詠乃が聞いた。

 界は黙って頷いた。

 次に盟への遺言書が開かれる。




我が娘 盟へ

お前には、死ぬ前に話しておきたい事がある。これは、礼二にも界にも言わずに秘めておきなさい。

まずはお前の御両親の事。そして、孤児院時代より昔の事。この2つは誰にも話してはいけない。
もう一つ、私がお前を養子に迎えた理由だが、
実はお前は、私が調べていたある事件に関係がある重要な人物として捜していたのだ。その事件と言うのが、界の本当の御両親が殺され、妹が行方不明となった事件だ。

界の御両親と妹さんは、お前も面識があると、以前私が船の話を尋ねた時に話してくれたな。あの時はまだお前も幼く、傷つけたくなくて言えなかった。

お前を家族に迎えた理由は邪道だが、私はお前を本当の娘として愛している。これだけは信じて欲しい。

お前は黒菱 盟として、これからの自分の幸せを願いなさい。
お前の花嫁姿が見たかった。

黒菱 灰仁

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