HEMLOCK‐ヘムロック‐
 全てがとても簡単な事だったかの様に思えて、界と礼二は声をあげて笑った。

 灰仁の死以来、疎遠だった2人が再び仲良く笑い合う姿を見て、黒菱家と付き合いの長い詠乃は、嬉しくて泣きそうな顔で笑った。

 これこそが灰仁が望む息子達の姿だろう。と。


「そして、これからお前はどうする気なんだ?」


 礼二の問いは今日の本題であった。
 イオの存在によって、善くも悪くも紅龍會に一歩近づく事になった界。

そうなった彼の行動パターンが読めない程、礼二は界を知らない訳ではない。





「行くのか? 紅龍會に」




「おう」







 界は敢えて笑顔で軽く答えてみせた。


「何度も考えたが、盟が幸せになるにはこの組織を潰すしかない」

「1人でか?」

「ああ。透達には言ってない。知ってんのはイオだけだ。アイツには、俺が紅龍會に行くに当たって色々下準備を協力してもらった」

「でも、中国でしょ? 紅龍會を脱退した彼が出来る協力って、一体どんな?」


 詠乃は心配そうに界を見つめた。

界の隣に座る彼女を礼二が見たが、また界に向き直った。


「イオがまだ紅龍會と繋がりがあるって事か?」


 礼二は真剣に界に問いつめる。
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