HEMLOCK‐ヘムロック‐
「界、盟は……」
「盟ちゃんは多分、あなたを異性として見てるわよ」
礼二を遮って詠乃が強い口調で言った。界は表情こそ固まったが、驚いている訳では無かった。
「あなた達、もう5年も2人で暮らしてるんだから解るでしょ? 盟ちゃんがあなたの事を特別に見ている事は。
あなたが独りで頑張った所で、彼女は不安に苦しむのよ?」
「詠乃君、ちょ……」
「礼二くんは黙ってて! 界くん、もっとよく考えてから行動して欲しいの! 私は!」
界は俯いて、目を閉じた。
初めて意志が揺らぐ瞬間。しかし、それは一瞬だった。
「気付いて無い訳じゃない」
礼二と詠乃は界を見る。界も2人の目を見て言った。
「でも俺は応えられない。これからも一緒に居て、2人でいつか紅龍會に捕らわれて死ぬ事が、アイツの気持ちに応えてる事になるか?
だから俺は、アイツと興信所を始めた事、ずっとどこかで後悔してた。2人でやればいいって話しじゃないんだ……」
必ず2人で突き止めよう。
盟にこう言われる度に、彼の心と意志は鎖に繋がれた。
しかし、その鎖を解き放ち、日常から離れなければならない日が来てしまった。