HEMLOCK‐ヘムロック‐

 界はどうしても、盟にまでそれを強いる事は考えられない。組織が狙っているのは盟なのだから。


「行く時は1人でって決めたんだ」


 詠乃はとうとう口出しする事が出来なかった。


「但し、1つ条件がある。俺もお前に習って、紅龍會にある措置をとる」

「措置……?」

「要するに俺もお前のように“行動”するって事だ」


 「但し、俺のやり方でな」と礼二は加えた。
界は本当は礼二も巻き込みたくは無かったが、この兄の瞳は一歩も譲る気がありそうにない。


「会社もある手前、お前の役に立つかは解らないが……。お前が紅龍會に直接メスを入れるなら、俺は間接的に切り崩す」

「……ああ。でも、あくまでも兄貴には安全でいてほしい。盟達の為にも」

「お前の作戦の様な無鉄砲出来る程、俺は若くない」


 完全に紅龍會に立ち向かう事前提の流れになってしまった2人のやり取りを聞いた詠乃は、深く溜め息をつき、こう続ける。


「界くん、必ず無事に帰って来る事を一番に行動しなさいね。命あっての物種よ」

「はい」


 詠乃が遂に折れ、界も改まった返事になった。



「ありがとう。兄貴、詠乃さん」


 こうして最後は締められた。いや、界にとっては始まったのだ。




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