HEMLOCK‐ヘムロック‐
外気の冷たさが身を突き刺す午前5時。東の彼方はうっすらと明るんでいる。
界はまばらに人が歩く新宿駅に向かう道の途中、携帯を開いた。
40件を超える、無視し続けた盟や透、泉からの着信。
ほとんどが盟だった。
彼は何度もかけ、番号を覚えてしまった透にコールした。
『界……!? お前、今どこだよ。みんなすごい心配してるぞ』
少し眠そうな透の声が耳に聞こえてくる。
「悪ぃな。昨日は漫喫に泊まってた。
つかさ、しばらく帰れない事になったわ。俺」
『は? どういう意味だよ!?』
いよいよ透の声的には目も完全に覚めたようだ。
「暫く興信所の事、頼むな」
『界! ……、『界!? 今どこなの!!?』
急に盟が電話口に出てた為界は焦った。どうやら透の携帯を取り上げたらしい。
『界!? まさか……、今どこなの!? 私も行くわよっ!!』
「盟……、」
『お願い! 1人で行かないで! 切らないで!!』
この電話が切れたら、二度と話せない様な。盟の声色は必死だった。
「盟っ!!!」
『か、い……?』
「ありがとうな! 今まで。興信所をよろしくな」
『か――』
ピ
界は携帯を電源ごと切ってしまった。
そして、成田空港に向かう為、新宿東口の改札機を通って行った。