HEMLOCK‐ヘムロック‐



「アイツ電話切りやがった」


 「ったく俺の心配わかってんのか?」とボヤキながら、界は携帯を机にポイと放ったが、勢い余って滑り落ちてしまった。


「なんか~界くん今の盟との会話、共働きの奥さんに言ってるようなセリフだったよ~」


 事務所で資料作りをしていた泉が言った。
界は自分が落としてしまった携帯を拾うため、席を立つ。床に落下した携帯は電池蓋が取れていた。


「はぁ? 何言ってんだお前」


 電池蓋をケータイに付けながら所長席に戻り、ため息を着いた。


「盟にばっか負担かけたくないなら泉も手伝うよっ? 尾行とか、張り込みとか♪」

「遠慮しますー。あ、事務なら増やすぞっ?」

「もう!」


 泉はまたしても捜査に加われず、頬を膨らませた。

 界はさっきまで見ていたヤクザや暴力団関係の近況情報を扱うサイトに再び見入った。

このサイトは書き込むのもそれ関係の人達で、例えばどことどこの組がどういう関係かとか、どこの事務所で何があったなどの情報が寄せられる。
もちろんガセも多いが。いわゆるヤクザの裏サイトみたいなものだ。


「やっぱ呈朝会はここ最近羽振りいいらしいなぁ」
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